シャルル・バルグのドローイングコース

今回は本の紹介をします。1866年にフランスで出版されたデッサン教本の日本語訳版です。当時の西洋で行われていたデッサンの基本練習を知ることができます。現在ではすっかりこの練習法は見られませんが、上達の近道とも考えられる方法が示されています。特に人体描写においては。

実物は木炭紙サイズほどの大きな印刷物で、紙を横に並べて等倍模写をする使い方だったようです。さすがに日本版は縮小しての販売です。日本画の粉本のように、昔の西洋でも2次元→2次元の模写で基礎訓練をしていたことが分かります。


本の内容としましては、石膏像の模写、名画の模写、人体クロッキーの模写の3段階にレベル分けされています。中でも3段階目の、シャルル・バルグが描いた人体クロッキーを模写するというのは面白い考えだと思いました。人体は複雑なので、クロッキーで簡素化されたフォルムから覚えるというのは理にかなっています。


輪郭線を駆使した石膏デッサンが特徴的です。石膏の「白い」を表しながら白い紙に描くとしたら、こういう答えになったのでしょう。

背景を暗くして白を出すというやり方もありますが、この方法に比べると手間がかかってしまいます。輪郭線という考え方は大昔から存在するとても合理的な方法です。ものの形を的確に表すとしたら、こちらの方法が正解なのかなと思います。日本のデッサン教育で「ものに輪郭線はない」という教え方がありますが、これは考え方の違いでしょう。

 


ちなみに、ピカソ少年時代の有名なデッサンがありますが、実は、シャルル・バルグ教本のこちらの図の模写だったりするのはあまり知られていません。